April 19, 2016

ユーザーを信じちゃダメ。当たり前ですよね?

時々、「ユーザーの想像を超えたものを作れ」とか「新しい需要を作れ」という頭良さそうに見える記事を web で見かける。 例えばこんな感じで。

自動車が無い時代には、ユーザーは「早い馬が欲しい」としか言わなかっただろう。

よくジョブスなんかが引き合いにだされる。

僕には、こういう表現が不思議だ。

プロが他人の言うことを鵜呑みにしてはいけないなんて、当たり前でしょ。 僕自身は IT 系のエンジニアだけど、ユーザーから要望が来たらこんな事を考えるだろう。

  • ユーザーと僕では立場や専門性からくる常識に違いがある。

  • 要望を出すだけなら無料。 そんな立場からいう言葉は、どうしても自分本位、自分勝手になってしまう

  • その意見は、ユーザー全員の意見だろうか? 全く逆の事を思っている人もいるかもしれない。 自分に聞こえてくる声には常にバイアスがかかっており、自分の感情は中立ではないことを意識しよう

  • ユーザーの要望をそのまま聞くと、システムの仕様は足し算のように増えていく。 一方で仕様の単純さ、少なさはそれ自身が品質である。 何かを追加する事で、見えにくい所で何かが失われていないだろうか?

  • その要望を出したユーザーにとって本当に必要な事って何だろう?

要するに、脊髄反射で素人の意見を聞くな。 プロだったら、確認して、考えろっていう事です。

まず、ユーザーの意見を聞いて、エッセンシャルな要望を取り出す。 次に、自分のリソース、冒すことの出来るリスクなどを考えて対応の必要性や対応方法を考える。 それだけの話だ。

上記の自動車と馬の例で言うと、「早い馬が欲しい」と言う人の本当の要望は「移動時間を短くしたい」とか、そういう事だろう。 だったら移動距離や移動頻度を少なくする工夫だって立派な対応方法だし、ワープ装置作っても良い。

要は、自動車を初めて作った人は「自動車を発明した事」が凄いのであって、「早い馬という発想から離れた事が凄いわけではない。」

「自動車が無い時代には、ユーザーは『早い馬が欲しい』としか言わなかっただろう。」 この表現には、議論のすり替えというか、 「虎の衣を借ろうとして、色々と残念な結果になってしまった」という気がするんだよな。。。